【A Few Left】鉄の風景 / 木村亜津

¥1,650

木村亜津展「鉄の風景」に向けて制作された作品集。オーストラリアで行ったフィールドワークで見つけた虹色に光る膜。自然界の現象を写し取った作品が標本のように並び、見る者の想像力に語りかけます。自然物をテーマに創作活動をする注目のアーティスト、木村亜津のユニークな視点を通してまだ見ぬ世界にぜひ触れてください。
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登山が趣味である私は、湿地帯の赤い水の上に浮かぶ油膜のような存在に長いこと心を惹かれていた。ある時、一緒に登った友人から、これは鉄酸化バクテリアが作る膜であることを教えてもらった。



数年後、オーストラリアのBilpinという町で滞在制作する機会に恵まれ、日々、リサーチとして藪を歩き、その道中で鉄酸化バクテリアの住処であろう、赤い水と虹色に光る膜を見かけた。



その町の一帯は砂岩が多い地層であり、砂岩が水を蓄えるスポンジの役目を果たし、岩から水が滲み出ている場所が多くある。そのような酸素が供給される境目であること、大地に多くの鉄が含まれていること、水の流れが緩やかな場所が多いことが、多くの鉄酸化バクテリアを生み出しているのだと推測した。



鉄酸化バクテリアが作る膜には複雑な金属光沢があり、私はその様子を紙に写し取ることにした。膜の上にそっと紙を置き、時間を測りながらゆっくり紙を持ち上あげる。



単純なこの作業も、その時の気温や天候、採集場所、時間よって2度と同じものを作ることはできない。現象を保存する標本のようなものであり、共作のドローイングのようなものでもある。



鉄酸化バクテリアが作る酸化鉄を素材として扱うことを発端に、自然界での鉄の酸化還元の循環を知り、鉄が必須因子である私たちの生命活動や、地球を取り囲む強大な磁場、相互に関係しあっている複雑さに思いを馳せることになった。



木村亜津

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※PC・スマートフォンなどの環境によって、実物と少し色が異なって見える場合がございます。

※販売は国内発送のみとさせていただきます。

デザイン : 鈴木清直
仕様 : 257x182mm / 28p
2022年11月刊行

(プロフィール)
木村亜津 Azu Kimura
木村亜津(東京都出身)は植物や自然物をモチーフとして作品制作するアーティスト。自然科学への関心を起点に、野外での観察や発見を作品に投影する試みを続けている。

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